30年前の制服。二人の息子たちが着ていた幼稚園のものです。ごそごそやっていた女将がなにやら持ってきたのです。
「あんたぁ、こんなのが出てきたで。久松幼稚園のときのだがなぁ?なぁ、かわいいがなぁ!」
これを着て、30年前の息子たち、年子の二人は自分の足で知事公舎の前にある園舎へ通ったのです。1.5kmあるでしょうか。帰りはけっこう遅い。
知り合いが
「あんたげの○○君は△△のとこの歩道の端に座って道路工事を見とったで!」なんてよく教えてくれました。
そんなのに、下校の時間が過ぎると母親はしょっちゅう外に出てまだ帰ってこぬかと、帰ってくる方向を見ていたものです。息子たちはあっちを見たり、こっちを見たりと、ぶらぶら帰ってくるのですが、家の方に母親の姿をみとめると急に笑顔になって走って抱きついてきたものでした。
そんなのが二人とも、もう三十いくつです。もう抱き上げたりはできません。その次男が四代目です。
これを入力中女将はちらりと見て
「ちがう、これは作業着だで。」とのことでした。