さて、先回KIさんだと分かったところまででした。
幾年前のことなんですが、若桜街道の画廊へ写真展を見にいったんです。
表のドアを開けて、中の、壁に貼ってある写真。
「わぁ、これはうまいゎ!」
と、つい、口に出たんです。
「波」ですよ。
いやぁ、ほんとにうまい。ここまで突き詰められるのかと、さらに、この表現の柔らかさ。
鳥取県にもこれほどの人がいるのかとびっくりしたんです。
その作者はその時は昼食でそこへいなかった。
私は、ゆっくりと一度めぐって見て、さらにもう一度すべてを見ました。
これが、もう、うまいんですよ。
で、今回来てくれるか、来てくれないか、とにかく案内状をポストへ入れたんです。
そしたら、、、、話はこの4日目の朝になるんです。
KIさんだと確認し、先の玄関で女将と話していた少しおばあさんは、なんとKIさんの奥さんのおかあさんとのこと。
看板だすときには気が付かなかったが、奥さんはまだ車にいるというんです。
奥さんにもこの写真展の作品を見せるか、見せないか。
「疲れるしなぁ、」とのこと。
皆が車のところに集まって、「なんなら写真をここに持って来ましょうか?」とは女将の提案。
こういう発想は女将でないとできないですよ。
奥さん本人も見たい様子。
で、奥さんに見せることに決定したようなのです。
奥さんは車の助手席で窓を開けたドアに軽く手の先をあづけてたんですが、その指先をかるくポンポンと叩いて、ご主人(KIさん)は車の後ろの荷台ドアを開き車いすを出したんです。
その車いすを「こぶし館」の玄関内、床の上へ置いて、また車へ、こんどは助手席のドアを開いて奥さんをひょいと、ほら、お姫様だっこですよ。
車いすへ運んだんです。
あとは、この夫婦はご主人が車いすを押しながら「あ、これいい。」「おぅ、これは色見もいいなぁ。」とか二人して静かにしゃべりながら、一回り、二回り。
そして、これはいいなぁと言った写真のところへ来て、二人してまた喋ってる。
その様子を見ていたんですが、なんともいい。
たぶん奥さんは難病だろうと思うんですが、二人の様子が実にいいんです。
ご主人は奥さんをとても大切にし、奥さんはご主人をとても信用している。
二人して、互いを認め合ってる様子なんです。
これには女将も同意見で、我々も互いを認め合いました。ひひっ。
なんかこの二人をみていると、ちょうど水晶の結晶を見てるような、そんな感じを受けました。
だが、この二人の物語はまだ続いたんですよ。
ホームページを見て、KIさんがこぶし館で個展を開いたのは知っていたんです。
で、その時にKIさんはこぶし館で写真展を開きたくて、自分の作品を抱えて、この会場へやって来たそうですよ。
その時に、ホールの隣の事務室で働いてたのが、なんと、KIさんの奥さんだった。
ホールのドアを開けて事務室を見えるようにすると。「あぁ、なつかしいゎ。その椅子へ座って仕事してたんですよ。」との奥さんの言葉。
いやぁ、なんなんでしょうかねぇ。
神さんか?仏さんか?なんか、関係づけなくてはならない人と人を結び付けているような、そんな風に思うんですが、どうですか?
五人色々話して、またご主人は奥さんをひょいと抱いて車に乗せ、「うちの近くへ来たら寄って下さい。」と言葉を残して帰っていきました。
このKIさんたちに会えたこと、なんか、ごっついよかった。
4日目はまだ終わらない。
つづく。