三が日が過ぎ、少し落ち着いた頃。雪おこしが鳴り、雪が降る寒い頃。
毎年「おいり」の製造が始まります。
40年ほど昔です。弊店の初代店主(祖父)のところへ四方山話をしにこられていた、その時には年取ったと感じていたお菓子屋さんが
「わしはもうえらいけぇ、おいりはやめようと思っとりますだが。」との言葉。
若かった私はこれを耳にして、私が作ってもいいでしょうか?と聞くと、
「ええですわいな。つくりなんせえな。」との言葉。
これが最初です。
このお菓子屋さんほどの年に私も、いまや、どうもなっているようで‥‥‥‥あぁ。
一つのお菓子を作り続けるというのはどうもなかなか大変で、長い間には色々ありましたが、現在は「炒米おいり」と「ぽん米おいり」を作っています。
あられを県外から仕入製造していますが、高価な原料です。
炒米のものはオリジナルです。知り合いの原料製造所と共同で開発しました。
ところで「おいり」は鳥取の東部から中部にある特殊なものですが、手で丸めたものは東部特有のものです。
ひな祭りに使われますが、江戸時代からでしょうか、きちんとは解りません。
製法は「おこし」と同じで、おこし自体は900年ごろの文献(その頃の辞書である和妙抄)にも現れます。
この因州ではいつごろから作られたのでしょう。
これは、はっきりとは解りません。
ただ、われわれの記憶では各家庭であまった、またおひつについたごはんを乾かし糒(ほしいい)を作り、これを炒って飴をからめ、おやつとして食べていたようです。
鳥取ではひなまつりの供え、のち食べます。
この地方では潤いを残す鳥取のお菓子となっています。
そう、県外に住んでいる人にはとても懐かしいお菓子です。